第668号 未来工業 故山田昭男氏に学ぶ「残業ゼロ」哲学
2017.1.16
未来工業 故山田昭男氏に学ぶ「残業ゼロ」哲学
働き方改革で最大の焦点とされている長時間労働の是正。
これに成功するためには、哲学が必要だと感じさせられています。残業禁止を貫き日本でいちばん労働時間が短いけれど、際立った生産性を誇る未来工業。創業者の故山田昭男さんの残業に対する考え方は、今、働き方改革を推進させようとしている多くの会社に大いに参考になります。
「残業の原因は、経営者が知恵を絞っていないことと、弱気によるもの。「お客が逃げたらどうしよう、売上がいかなくなったらどうしよう」と、経営者がダメになったときのことばかり考えるから、社内の雰囲気が悪くなる。従業員も帰るに帰れなくなって残業が増える。事実、日本の全企業の7割以上が赤字企業。25%の割り増し残業を払い続ければ、そりゃ赤字にもなるし、大企業みたいに100億円近いサービス残業を隠さないと経営の帳尻が合わないのは当たり前。」
「人を雇えないから残業させるというのは間違い。25%の割増金を払って利益を出せる会社がどのくらいあるのか。」
当たり前の大前提ですが、残業をするということは割増手当の支払いが必要になるということです。つまり、コストUPすることになります。残業すればするほど利益が圧迫されることになるのです。長時間労働を前提としている日本企業が先進国の中で生産性が低いというのは、ここに大きな問題が内在しています。これからは端から残業なしを前提にした経営の実現を絶対基準にしていくことでしょう。そのことについてこのようにも語られています。
「いまはどこの会社の経営者も、従業員の残業を減らすことに躍起になっているけど、残業を減らすなんて簡単なこと。8時間働いたら帰ったらええだけでしょ。従業員にそれ以上の仕事をやらせなければいい。それじゃ、ノルマを達成できないって?じゃあ、残業すればノルマが達成できるのか?そもそも会社経営というのは、従業員が8時間働けば黒字が出るように計画を組んでいるはずでしょ。残業をしないと会社が傾くと考えるのは、経営そのものがおかしいのではないか。」
このうえなく明快です。残業をしない前提で持続可能な経営計画をしていかなければ話にならないと一刀両断です。シンプルですが、こう発想して事業計画を立てている経営者はそうは多くないのではないでしょうか。しかし、ぜひチャレンジすべきテーマでしょう。残業がない会社というのはどういう状態か、お客様との関係、社内の体制、取引先との関係、あらゆるあり方について再考させられるはずです。それが知恵を絞るということではないでしょうか。また、こうも語られています。
「給料を払っているから従業員をできるだけこき使え、という発想。そういう発想では、いつまで経っても残業はなくならないよ。」
「一日は24時間しかない。朝7時に家を出て、午後7時に帰宅し、8時間睡眠をとったら、残りはたったの4時間だ。これを残業なんかに使ったら、食べて働いて寝るだけの人生になってしまう。そんなつまらない生活ではなく、もっと人間らしい喜びを感じられることに時間を使ってほしい。」
これまた考えさせられます。きわめて本質的な投げかけです。人として尊重される働き方が何より重要で、それを重んじるからこそ残業という発想がなくなるということを示唆されています。某広告代理店は肝に銘じるべき言質であると感じてしまいます。そして、どうすれば残業がなくなっていくかということについてはこう述べられています。
「規定時間内で成果を出すには、従業員の仕事上の不満や不安をギリギリまで減らすことに尽きると思う。未来工業のいろいろな取り組みは、すべて社員の不満を解消するとともに、社員を感動させるためにやっていることばかりだ。感動は人を喜ばせる。喜んだ社員は一生懸命に働いてくれる。会社のためにやってやろうという気持ちになる。そうして頑張った結果が、お客様を感動させ、事業を発展させることにつながるのだ。」
社員の不満や不安を聞き出して、解決していくための知恵を出して実行していく、これで残業がなくなると指摘されています。信じて活動してみてはいかがでしょうか。
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