第963号 「新しい資本主義」に断固反対する

第963号 「新しい資本主義」に断固反対する

「新しい資本主義」に断固反対する

岸田首相が肝いりで進めている
「新しい資本主義」にかかわる施策の概要が判明しました。

勤続年数に応じて賃金が上がる職能給から職務給への移行を進めるほか、
副業の人材を送り出したり、受け入れたりする企業に補助金を出すなどして
労働移動の円滑化を進めるとしています。

失望に変わった新しい資本主義

これは全くの愚策としか言いようがありません。

ジョブ型雇用では、多数のポストが用意されます。
そして、挙手をさせてそのジョブに社員が就くことをマネジメントしていきます。

この結果、組織内では当然に競争が発生します。

「ジョブ型」を勧めるコンサルティング会社は、
これにより企業は自律自発的な社員がイキイキと働くことができる職場が実現できる
と宣伝しています。

本当なのでしょうか?

どう考えても競争の激化は、成果主義を誘引することは目に見えています。
そして、一度就いたポストにしがみつく社員も多く発生させることになるでしょう。

その結果、大切な社内での社員同士の協力関係の質が棄損されていくだろうことは
火をみるより明らかです。

ジョブ型雇用の前身である職務給や職務型人事制度は、
これまでも年功序列、終身雇用を悪玉にして、何度も提案され、
都度、日本企業になじめず尻すぼみになっていった歴史があります。

歴史は繰り返すといいますが、またかという感が否めません。
しかも、今回は職務給を導入する企業に税金を投入する政策と聞いて呆れるばかりです。
会議の有識者は何をやっているのか?

ジョブ型で労働者は幸せになるのか?

その制度がより人を大切にする経営を進化させるものとして、
導入検討に値するものなのかどうなのか、
正確かつ簡単に判断できる方法があります。

それは、伊那食品工業や未来工業のような
人を大切にする人本経営のレジェンド企業が、
それを実施しているのかどうかです。

実施していることならば、検討の価値は大いにあることでしょう。
しかし、実施してなければ、どんな流行でもスルーの一択です。

「ジョブ型」はどうでしょうか?
答え=してません

未来工業の山田雅裕社長は、
「年功序列はパーフェクトではないが成果主義よりいい」と明快です。

同社の定年は70歳。60歳の給与のまま働くことが出来て
その分退職金にも反映されていきます。

伊那食品工業もホームページで

「当社の人事評価、仕組みは成果主義ではなく、基本的には年功序列です。
お互いに、競争しあうのではなく、協力できる組織にする、
だからこそ人間本来の姿、年少者が年長者を敬う自然の形が正しいと信じています」

ときっぱりです。

加齢とともに豊かな生活ができるように賃金カーブが設定されていることは、
人としてなにより幸福の実現のための下支えになります。

年功序列、終身雇用が悪なのでは決してありません。
それを実現できない近視眼的な企業経営のあり方が問題なのです。

これこそが問題の本質論のはず。
問題設定をすり替え、さらに問題状況を悪化させることを
政府が血税を使って実施しようとしています。

ジョブ型はさらに短期思考の成果主義を蔓延させ、
不幸な労働者を量産させる結果になることは確実です。
新しい資本主義の正体がこれならば失望しかありません。
断固反対いたします。

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