第982号 企業経営における「幸せ」の定義Ⅱ ~精神的健全さの追求
2023.3.27
企業経営における「幸せ」の定義Ⅱ ~精神的健全さの追求
企業経営における「幸せ」の定義について考察を続けていきます。
前号では、「幸せ」実現の大前提として、
社員一人ひとりが心身ともに健全健康でい続けられる職場環境を整えることである
と展開いたしました。
可能な限り、不平不満のない状態をつくったうえでないと、
いくら社長が「幸せな職場をつくる」と宣言しても上滑りになるので
前号の指摘はとにかく留意をしていただきたいと改めて強調します。
つまり物理的、肉体的に健全性が担保されたうえで、
「幸せ」実現に欠かせない精神的な健全さの追求が始まる訳です。
究極の幸せ
日本理化学工業の故大山泰弘さんが説いた究極の4つの幸せは、
その後、多くの人本経営者に影響を与えています。
それだけ真理があるということでしょう。
4つの幸せとは、
①人に愛されること
②人の役に立つこと
③人から必要とされること
④人にほめられること
とご指摘されています。
重度の知的障がい者の雇用を通じて学んだことは
「福祉施設で大事に面倒をみてもらうことが幸せではなく、
働いて役に立つ会社こそが人間を幸せにするのです」
ということであったと大山さんは回想されています。
そして、憲法において勤労の義務と権利が保障されているとし
障害があってもすべての国民が働くことでこそ得られる、
この4つの幸せをつかむことが大切だと
皆働社会実現のために多大な尽力をなさいました。
①の愛されることはご家族、特に親御さんから無償の愛を感じるなどできますが、
それ以外の3つは、人から、あるいは人に対して、
つまりは社会から、その形は仕事を通じてしか得られない究極の幸せであるという言説は
これ以上ない説得力をもって迫ってきます。
マズローも欲求5段階説において、
物質的欲求を満たしたうえの第三次、第四次欲求で
「愛と所属の欲求」「承認の欲求」と寸分違わない指摘をしていることに驚くとともに
合点がいきます。
いかにして4つの幸せを実現していくか
役立つ実感、必要とされている喜び、
そして承認される組織風土を、自社でいかに形成していくか、
これこそ人本経営の大命題といっても差し支えありません。
その実現に際して、必要不可欠なことがあります。
それは組織のリーダーのあり方です。
支配することや管理することで、
それらの4つの幸せを心から体感し満喫することは不可能なことであると気づかされます。
なぜならば、それらは自ら考え自律的に行動することによって、
その結果として大きな実りや対価として還ってくるからです。
業務命令では自発性、自律性が育たないことは明白です。
やらされ感満載な職場で、もっと人の役に立つように、
必要とされる自分になるために社員は喜んで腕を磨こうとするでしょうか。
そして仕事をやっても「当たり前だ」といった
感謝の気持ちのかけらもリーダーから届かなければ、
やりがい、働きがいを社員がもてるはずもありません。
マズローが5段階説の最上位に示したのが「自己実現の欲求」です。
まさしく卓越していると唸らされます。
やらされ感なく、よい人間関係の中で、
自立自発的に人の役に立ち、必要とされる自分がいて、
周囲から「ありがとう」という感謝や承認のたくさん沸き起こることこそが
欲求の最大充足、すなわち究極の「幸せ」の実現の段階であると述べているのです。
(以下、次号)
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