第905号 今、あなたの職業で考えてほしいこと

第905号 今、あなたの職業で考えてほしいこと

今、あなたの職業で考えてほしいこと

人を大切にする人本経営を極めた、あるいは強く志向する経営者が、自社で確立した経営手法を、
惜しげもなく同業他社へ公開していく行動をとる事例が多いことに気づかされます。
なぜそういう行動を取るのでしょうか。

その理由の一 自分の仕事に誇りをもっている

いちばんの動機づけになっていることは、してきた自分の仕事に対してとても誇りをもっているからこそ、
そうした行動になるのではないかと感じられます。

業績軸から幸せ軸へ、突き抜けていく人本経営を志向していくと、
それまでの業績軸では慣習のような、疑いのないような常識といった「あり方」に、
それは間違っている、誤っていると鉄槌を下すかごとき、
違った仕事の展開をすることがままあります。

たとえば、シューズメーカーでは、左右のサイズが違う、
あるいは、かかとの高さが違う靴をつくって売るなど常識として考えられません。
そんなことしたら会社がおかしくなると普通の経営者では想定しないことでしょう。
しかし、そうした不揃いのシューズをつくり続けている会社が四国にあります。徳武産業です。

足に不自由を感じる高齢者にとって、
あるいは多様性の時代に外に出たい、お洒落したいという足に障害のある方々にとって、
自分にぴったりのサイズの靴が見つけられたことで、再び生きることの喜びが与えられ、
この会社には全国各地から毎月山のように感謝状が届きます。
改良に改良を重ねて、顧客に愛され、商品は「あゆみシューズ」として
業界のトップブランドとなりました。

苦労を重ねたにもかかわらず、これを生み出した十河孝男さんは、
特許を取らず同業他社が模倣してくることをむしろ歓迎しました。
これからの高齢化社会において、自分たちの仕事が必ず社会の役に立つことができる、
そのためには自社だけでなく業界全体で、よりよい商品づくりをしていったほうが、
社会にとってよりよいことだという仕事に対する誇りが、
そうした利他に満ちた行動をとらせるのでしょう。

そして、この十数年で介護シューズ業界という新たな市場が誕生していきました。
今後、間違いなく四国発のこのマーケットは世界中に広がっていくことでしょう。

その理由の二 自分でできることなんてたかが知れている

人本経営は、全員主役の経営です。
社長一人が頑張ったって出来ることなど限られているから、一人ひとりを主人公にして、
仕事で関わる人々との関係の質を向上させ、結果の質を高めていきます。
この発想が会社単位でも起きるのです。
自社でできることは限られているので、業界ぐるみで行動していった方が、
より社会全体にとってプラスと志向していく訳です。
前例の徳武産業もまさしく、このことが確認できます。

業界の常識と思っていた仕事が、
実は社会の健全性の促進を阻んでいるといったようなことはないでしょうか?

社労士として10年経ったとき、わたしはこの壁にぶち当たりました。
バブル経済が崩壊し、その頃、日本の多くの企業では、もう日本的経営は限界だと
労使協調路線からドライな契約概念の強い成果主義が職場の労務管理の現場を跋扈していきました。
そして、個別労働紛争が、まるで現在のコロナ感染者の爆発のように増えていきました。
リスクヘッジのための就業規則のつくり方ノウハウ、問題社員の辞めさせ方、
労働紛争の解決ノウハウがニーズとして沸き起こり、実際、そうした仕事が激増しました。

そして仕事を重ねていくうちに気づきました。
ルールに縛られて覇気のなくなった社員の顔、
社員のことを単なる労働力としてしかとらえられなくなった笑顔のない経営者、
「幸せ」という言葉が出る余地のない職場、
生活と明確に区分けされたクールな会社の存在がなんと多いことかと。

社労士は社労士で、結果として、そういう現象を増やしてしまっているのに、
今日もまた労働紛争解決の仕事に精を出している・・・。
違う、とわたしは立ち止まることができました。
労働紛争を解決する仕事なんてなくなった方が世の中にとっていいに決まっている。
紛争が起きない健全な職場づくりに貢献出来てこそ、人の専門家としての存在理由があると、
当時の社労士としての自分を自己否定しました。
その時生まれた思い、理念が、今、人本経営を世に広める社労士という新しい自分を育ててくれました。
社員に覇気が戻り、社長は笑顔になり、幸せづくりが経営理念になり、
会社はもう一つの家庭となりました。

社労士ほど素敵な仕事はないと心から思えるようになりました。
そして、自分だけでなく、未だこの仕事の素晴らしさに気づけていない同業者に開眼してほしいと
「志伝塾」を開きました。

気づくと先達の人本経営者と同じ行動をしている自分がいます。
ということは、人として正しい道を歩めているのだと確信がもてます。
皆さんの職業でも、本当はない方がいいのに、業界の常識や慣習に阻まれて、
またはそれで儲かるから、続けている仕事はないでしょうか?
そして、社会にとっては、本当はやったほうがいいのにと思っている仕事はないですか?
あるといえるのなら、ぜひ、行動してください。
それが業績軸から幸せ軸へ変化するということです。
ほっほっ蛍来い、こっちの水は、、、。

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