第886号 合意形成の驚くべき効果とは
2021.3.29
合意形成の驚くべき効果とは
傾聴することにより、相手に対する理解度が高まるという「関係の質」の向上がはかられ、思慮し状況に適した応対が出来るようになることを学びました。
この能力が身についたリーダーは、独断専行することがなくなってきますから、課題解決にあたって、より正解に近づく選択肢をチョイスできるようになっていくことがわかります。
たとえば、新規事業を立ち上げようという計画が持ち上がったとします。リーダーとして、どのように資源を投入して、どうしていけば成功していく確率が高くなるか検討しプランニングをすることになるでしょう。
独善的なリーダーだと、計画段階も一人で考え計画をまとめあげ、出来たプランをメンバーに示し、これで行くぞと号令をかけていきます。メンバーたちから出る疑問も、説き伏せて自分の計画がいかに正しいかを説得しようと試みていくのではないでしょうか。そして、最後は権限をつかって業務命令という伝家の宝刀を抜いてしまいます。
それで結果、成功することはないとはいいません。ですが確率はとても低いと断じざるを得ません。
何故か。まず一つは、業務命令では、メンバーは、言われたことしかやらない状態になってしまっていますから、チームは掛け算にならず、高いパフォーマンスの期待ができないと考えられるからです。疑問を感じているのに、やらされている状態では、仕事に身が入る訳もないのです。新規事業の開拓で客先にいっても、あと一押しが出来ないで戻ってきてしまい、「ダメでした」と報告をする場面が目に浮かびます。
成功の可能性が低いと考えられる、もう一つの理由は、リーダーの独断で考案したプランそのものが、成功に向けたベストの計画ではないと判断出来るからです。
■合意形成の超重要性
人本経営の指導をさせていただく企業で、合意を形成するワークをよく行います。正解のある課題と正解のない課題と両ケースがありますが、前者の場合、正解のある課題をまず個人で解答を考えたのちに、5~6人のメンバーで45分間、チームとしての解答を合意形成してもらうのです。
最初に考えた自分の解答を変えていくのは、なかなか難しいものです。しかし、傾聴することの大切さを学んでいると相手が何故そう思うのか背景や理由をお互いに受け止める対話ができるので、なるほど、それも一理あるなと寄り添っていき、徐々に個人の解答が、それぞれ修正されながら、チームとしての解答へとまとまっていきます。
わずか45分という話し合いの時間ですが、驚くべきことが起こります。
傾聴力の高い組織では、ほぼ100%、チームで出した解答が正解に近づくという現象が起きるのです。三人寄れば文殊の知恵とはよく言ったもので、少数意見を排除せず、いろいろな角度から検討していくことで正解に近づくのだとわかります。これは物事の道理といっていい作用といえるでしょう。
また正解のないワークでもお互いの意見、価値観を聴き、受け入れるという対話の時間があるとチームでの解答に、それぞれのメンバーの納得感が増していることが見て取れます。
ですから新規事業の計画段階で、メンバーと十分に対話して、様々な角度から意見出しを仰ぎ、確かに一理あるという提案は欠かさず計画に反映させていくことが成功の可能性を格段に引き上げていくことになると推測できるのです。そして、意見が採用されたメンバーはどう感じるでしょうか。リーダーは自分の意見を聴き入れてくれた、この計画は自分も関わったという当事者意識になるのは想像に難くありません。その結果、納得して行動をするようになります。やらされているより、遥かにモチベーション高く仕事をしてくれるようになるでしょう。それが、客先の現場での粘り腰につながり、「やりました。受注しました!」という喜びの報告の場面につながっていくことも多くなるでしょう。
関係の質が結果の質につながる法則は、ここでも検証できるのでした。
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