第885号 超実践的「傾聴」ノウハウ

第885号 超実践的「傾聴」ノウハウ

超実践的「傾聴」ノウハウ

■聞くと聴くの違い

これもよく指摘されていることですが、傾聴は聴くことで聞くことではありません。「ちょっと時間をつくってくれないか」とメンバーと向き合う時間をつくることはどの職場でもよく見られる光景です。リーダーとして、自分は意識してそういう時間をつくっているという方も多いでしょう。しかし、みていると、いつの間にかリーダーのほうが話している時間が多くなっているケースによく遭遇します。

聴くつもりが、聞いてしまい、反応してしまっているという状態です。そうではなく、相手の今を理解することを目的にしておくことで傾聴は成り立ちます。相手が話しているときに、こっちが何か言おうと思っている状態は、ただ聞いているだけにすぎません。文字通り相手の言葉を耳に入れてはいますが、その言葉の真意とか、背景について慮っていくという姿勢がないと、「それより、こうしたらどうだ」といった指示出しや「それは無理」というダメ出しをしてしまい傾聴の時間でなくなってしまいます。

何か教えたり、諭したりするのは傾聴の時間では必要ないのです。今、相手にどのようなことが起きていて、それに対してどのような気持ちや感情を抱いているのかを感じ取る共感をするのが傾聴の時間です。そういう状態でいると、例えば、なるほど家族にそういう事態が起きているのなら、「それはよかった、うれしいね」とか「つらい思いをしているんだね」といったように喜怒哀楽の感情を示す言葉を素直に口にして相手に伝えることが出来るはずです。

■距離感を近づける傾聴

この行動をすると、この人は自分のことを理解してくれようとしているとはっきりと距離感が縮まります。つまり、関係の質がよくなっていくことが実現できていくのです。

相手の感情や思いを受け止めたあとについてですが、「それは腹立たしいな、よし自分に任せておけ」と必ずしも同意を示す行動をする必要性はありません。傾聴は共感することが目的だということを改めて踏まえておきましょう。相手の状態を慮ったうえで、どのような支援をすることが出来るだろうかと思慮することはもちろん大事です。重要なことは、相手が自己解決できるように支援していくことです。相手の自発的な次の思考と行動につながる時間になれば、それはとても良質な対話になっていきます。

「今、とても大変だな。まあ、でもここを乗り越えていけば、きっと成長できるはずだよ」とか、過去に同様な出来事があったとしたなら、「自分は、こんなことをして乗り越えた経験があるよ、参考にしてはどうだろう?」といった投げかけをして、相手が主体的に解決できるヒントや気づきを得てもらえるように働きかけていきましょう。

ここで自分の価値観を持ち出し、決めつけて、ああだこうだとやってしまっては、ここまでの傾聴の時間が台無しになりますから十分留意してください。対話が終わった後は、相手が考え行動をしてくることを見守っていく時間となります。相手も苦しくきつい時間かもしれませんが、簡単に手を差し伸べることをせずに、待ちの姿勢でいることです。

その後、相手の変化、行動が見て取れたら、すかさず、「頑張ってるな」とか「すごいね」など声掛けをしていきましょう。それにより相手の承認欲求は満たされ、さらに「もっと頑張ろう」と動機づけられていくことになればしめたものです。また、相手から再び相談に乗ってほしいなど対話を求めてきたら積極的に応じて、よりよい気づきが生まれるようにさらにサポートをしていきましょう。

それらが心理学的にはストロークという行動です。これが蓄積されていくと相手は心理的安全性が高められ、居心地のよさを感じ、自己のポテンシャルを最大限に発揮しようと行動してくれます。そして、そういう状態の時間があることが相手の人間力を向上させていく結果をもたらすのではないでしょうか。

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