第884号 幸せをもたらす「関係の質」の種をいかに育てていくか

第884号 幸せをもたらす「関係の質」の種をいかに育てていくか

幸せをもたらす「関係の質」の種をいかに育てていくか


企業業績といった結果は、その組織における関係の質の良好さによって決定づけられているとダニエル・キム教授は組織の成功循環モデルを説きました。本当にその通りだと感じます。

日頃、上司や先輩によくしてもらえていると思う部下は、上下関係において良好さを感じています。そうしたら、「いつも、お世話になっている。ありがたいな。何か役に立つことで恩返ししたい。」と考えるのは普通でしょう。つまり、思考の質がよくなっていくのです。そして、「とにかく上司は忙しそうに働いているから、その一部でも自分が出来るようになったら少しは楽になるだろう。よし〇〇のライセンスを自分が取って専門性を身につけよう。」と自己啓発を始めていきます。行動の質がよくなっていくのです。そうして努力した結果、首尾よく資格を取得し、上司に対して「その仕事は自分に任せてください。」と進言していくことが出来るようになります。

それをみた上司は、「お前やるな、すごいじゃないか。よしわかった、ではこの案件、任せるよ。」といった具合に信頼関係がさらによくなっていく展開が展望出来ます。期待された部下は、「よし、ますます頑張ろう。」とさらに思考の質高めて次の行動に移っていきます。良好な人間関係が、未来の望ましい結果を連れてきてくれるのです。

反対は大変ですね。「うちの上司は全く話を聞いてくれない。提案してもほとんど取り合ってくれない。この間、それいいなとやっと言ったと思ったら、いつの間にか自分が発案したように振舞って手柄を独り占めしている。なんかむかつく。」こんな悪感情を抱いている間柄だったら、「面白くない、もう絶対提案なんかするものか。」と思考の質が劣化し、それに伴い指示待ちになるという消極的な行動になっていきます。見た目にもやる気を感じられず、上司は自分のことは棚に上げて「あいつはいちいち指示しなけりゃ仕事をしない。使えない奴。」と評価が下がり、さらに関係性が悪くなっていきます。そうなれば、離職していくか、ひょっとすると精神的に障害をきたしてしまうという最悪の結果を招きます。

実によく出来た理論だと改めて感じてしまいます。ぜひとも日々の職場、そして生活の場で、相手との関係の質を良くしていきたいものです。それは、どうすれば実現できるでしょうか。

■関係の質をつくるのは相手ではなく自分である

絶対条件があります。それは、関係の質を良くしていくのも悪くしていくのも自分次第であるということです。どんなに苦手なタイプの相手でも、いやだいやだと積極的に関わろうとしなければ関係性はよくなっていくはずがありません。

「鏡は先に笑わない」というのは真理で、笑顔になれよと鏡の向こうの自分に投げかけても笑いません。こちらがニコッと笑ったら、鏡の自分も笑顔になるのです。対人関係でも全く同じです。

ということは、心もち、つまりどういう意識でいると相手との関係がよくなっていくかということを考えておくことが大事だとわかります。

俗にいう、利己ではなく利他のあり様を自分なりに腑に落として相手と距離を取っていくことが出来れば、よい関係の質を育てていくことが出来そうです。

■俺が俺がの我を捨てて、おかげおかげのげで生きる

これもよく言われている格言ですが、利他の心もちとは何ぞやということを端的に表現して、言い得て妙な格言です。自分ファーストで行動している人は誰だって顔をしかめます。そして、重要なことですが、相手からのアプローチの機会を相当奪ってしまっているに違いないということに気づかされます。

「あの人には言っても仕方ない」と周りの人たちは思うのですから、そうなってしまいます。胸襟を開いていたいものです。聴く耳を持つ姿勢でいることが、関係の質を良くしていくスタートになるとわかります。そうです。おかげのげは解放の解なのです。心を解き放つ、そういう姿勢で対人関係を切り開いていきましょう。ここに傾聴するという行動がいかに重要であるかということが理解できます。

次号以降、関係の質をよくしていくためのあり様を考察してみたいと考えています。

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