第874号 総括2020 コロナが教えてくれた人本経営のすごさ、強さ
2020.12.28
総括2020 コロナが教えてくれた人本経営のすごさ、強さ
社労士として、起業後23年目がまもなく終わります。開業したのは1997年、失われた10年の真っただ中で、企業社会では、日本的経営はもう限界と、さかんに米国型成果主義の人事評価制度が導入されていました。それは労使協調、年功序列を基本方針としていた風土を大きく傷つけました。リストラも吹き荒れ、個別労使紛争が激増していきました。10年間、そうした傷ついた職場の修復を行う仕事に明け暮れていきました。ユニオンとの団体交渉や労働裁判で法廷闘争の現場にまで仕事は拡張していきました。疑問が湧きました。いったい自分は何のために社労士を開業したのだろうと。そして気づいたのです。いやしくも社労士が、国家資格として人の専門家として「士=サムライ」業という称号をいただいているのに、紛争解決処理に埋没していいのか?そんな対症療法をいくら講じても、また、性悪説に立って就業規則などで人事管理ルールを引き上げても、一向に会社はよくなっていかない。常に人のことで問題が発生し悩み続けていくだけで、これでは労務屋で終わってしまう。
労働紛争が決して発生しない健全健康な職場づくりに貢献出来て、人の専門家としての社労士の存在理由があるはずだと10年目にして社労士という仕事の本質にたどり着き、恩師坂本光司教授と出会い、覚醒し、人を大切にする人本経営を、社労士という仕事を通じて世の中に広げていくことを使命として前へ前へ進んできました。
気がつけば、はや13年が経ちました。転換期の頃、リーマンショックがあり、今年同様、経済はガタガタになり、多くの会社では企業経営に影響が及んでいました。当時のクライアントは人本経営の伝道によってご縁があった会社ではなく、ご多分に漏れず業績軸で目先の利益を追い求める会社が多かったので、七転八倒している会社が多かったことを覚えています。覚醒した自分が、社員の雇用を守ってはどうかと進言しても耳を傾けないばかりか、顧問契約を解除される事案も発生しました。もちろん収入的には応えましたが、理念に目覚めたら強いです。どうせ、社員を経営の道具としてしか考えていない会社と付き合っていってもろくなことにならないだろうから、上等だと考えることが出来ました。
どうすれば、「いい会社」になれるか、必死で学び、一つ一つ実務として形にしていきました。それは試行錯誤の連続でしたが、当方のメッセージを受け止めてくださった心ある経営者は、共に経営の歩みを業績軸から幸せ軸へと改革していかれました。また、新規に出会い、クライアントになってくださるお客様も徐々に増えていきました。この13年間で弊社のクライアントは、人本経営を本気で志している企業が圧倒的になりました。
職業は社労士として変化はありませんが、その目的、理念を「人の幸せを増大させる」ことに置き、山を登るように歩みを続けてきたら、見える景色が13年前のそれとは一変しました。
未曾有のコロナ危機に直面しても、当社のクライアントは微動だにしていません。絶対に社員の雇用を守ると宣言し、一枚岩となってこの難局を乗り越えるために、さらに関係の質をよくして、思考と行動を上質なものとしています。だからすでにV字回復という結果を招くことに成功した会社も出始めています。業種によって影響が直撃している会社は、まだきつい時期は続くでしょうが、社員の表情は明るく、時間の問題で必ず復活されると確信しています。
トヨタと日産の現況がレポートされています。コロナで業績の二極化が鮮明となる自動車メーカーということで、通期の営業利益見通しを2.6倍の1兆3000億円に引き上げると誇らしげに表明した豊田章男社長率いるトヨタと、コロナ禍からの回復が遅れて1400億円の営業赤字見通しと沈んでいる日産が対比されています。
これほどわかりやすい事例はありません。2010年から伊那食品工業の塚越寛氏の人を大切にする経営に感化され、地道に経営改革を断行してきたトヨタと、業界のスター外国人経営者を抜擢して効率化・合理化でリストラの嵐を起こし、短期的には収益性を改善させたものの、おごり高ぶったボスマネジメントの果てに失脚して逃亡していった経営者に率いられた日産。幸せ軸が業績軸に勝利したのです。2、3年の短期でなく10年程度の年月をとらえてみれば、人本経営がいかに有効であるかということを明確に教えてくれた典型的な事例といえるでしょう。
永続という経営者にとっての勲章を人本経営は与えてくれます。これからも自信と誇りと確信と勇気に満ちて、人本経営を志し続けていきましょう。
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