第818号 神様が応援したくなる会社 ヴァンサンカン

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神様が応援したくなる会社 ヴァンサンカン

「人を大切にする経営」実践企業の研究44

■原点回帰

もう一回やり直そう。石原代表は、急成長の結果、理想とかけ離れてしまった現状を見つめなおし、断腸の思いで旧店を閉鎖し、一店舗体制にすることを決断しました。多店舗化2年半後のことでした。もう一度、「恕の精神」で一人ひとりのお客様に向き合い、わたしが通いたい店にしていこう。大切なことは、この仕事が世の中に必要かどうか。そして楽しくなければつまらない。「ねばならない」で動き、周りをしばっていたことを反省し、社員と思いを一つにするのは大変だけれど、人に喜んでもらうことで、いちばんテンションが上がる自分を取り戻すために原点回帰していきました。

■伝えたら、伝わってきた

もっとしてあげたい、売るではなくて「これがあるといいね」という気持ちで仕事をしていくとお客様はすごく安心、そして商品に対して信頼してくれる。そして、それはそこで長時間働くスタッフたちにとっても心地よい空間になるはずと考えました。スタッフ一人ひとりが自分の力でリセットできるような暮らしがおくれる職場は、人が育つことにつながる。それは、いい商品づくりにも好影響が及ぶ。形だけの成功を投げ捨てて、社員と分かち合い、うそがないこと、言っていることとすることが一致するよう行動していきました。正直でいよう、間違いは謝る。このことを伝えていったら、スタッフから伝わってきたといいます。まさしく本気の行動が周りの共感共鳴を呼び起こしたということでしょう。

■年輪経営を貫く

再び事業が順調になった頃、フランチャイズで全国展開しないかという話が舞い込んできました。並みの経営者なら身を乗り出すところ、年輪経営の重要性を身をもって認識していた石原代表は揺るぎない行動を実践します。身の丈でない儲け話には首を縦に振らない自分を取り戻していたのです。儲かったとしても、またあの急成長のころのつらい思いや楽しくない日々を思い出し、自分がやりたくないと感じられたといいます。この時、心がどうありたいかが大事だと深く感じたといいます。

■いい会社にしても毎日いろいろ起きる

どんなに「いい会社」をつくったとしても、毎日毎日いろいろなことが起きてきます。大切なことは、日々、失敗もいっぱいしながら、皆でどうしたらいいか、次はどうしていこうと相手を思いやっていくことだと体験的に語られています。そうして一人ひとりの心の許容を広げていく場数をこなしていくことで組織風土に磨きがかかってくるのです。悩んでも人本で進んでいくことにぶれない法則、これは本当に重要な心がけであると改めて感じさせてもらいました。

■幸せ軸の決断

全員が女性社員だけの職場の宿命といえますが、一人またひとりと産休・育休に入るスタッフが増えていきました。どうやりくりしてもシフトが回らない状況になっていきます。このまま営業を続けていったら、現場がもたない。石原代表は、損得勘定はもちろんしましたが、残業はやめようと決め、行動しました。お金をたくさん使ってくれる客層は多いけれど、夜9時までの営業時間を7時までにすることにしたのです。お客様には申し訳ないけれど、一人のスタッフが抜ける方がよくないと、人を大切にする軸で判断した結果でした。この時のことを石原さんの右腕、そして支援型リーダーとして活躍する川口悦子さんは次のように語ってくれました。「石原代表は、スタッフが不安になる前に行動している。だからスタッフが会社のことを思い行動するようになっている。営業時間短縮の件もそうで、皆で話し合い、協力し合おうと団結して、週一、金曜日はナイトデイとして9時まで営業したいといい行動してくれた。朝1時間早く開店するといったアイデアも出し合って、失うはずだった7割のお客さんをカバーした。」

毎日いろいろなことが起こっている、でもそれが上がってくることがいい状態という川口リーダー。人の問題は、相手の立場を慮り、「何ができるかな」「どうしたらいいかな」と心の状態を同じにして考えているといいます。それは相手が大切にされているからこそ同じになれるのだと感心させられました。

最後に、人本経営を志す人たちへ、石原代表からいただいたメッセージは暖かく強いものでした。

「当たり前の水準を高くする。こちらの出番がもっと多くなるように寄り添える機会を研ぎ澄ます。なくてはならないホンモノになる。そしたら面白い。時が変わっても、人が変わっても、選ぶことをしよう。神様が応援したくなる方へ。」

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