第806号 人本経営における人事制度のあり方3 提案制度・SDGsほか
2019.10.28
人本経営における人事制度のあり方3 提案制度・SDGsほか
引き続き、エンゲージメント項目に沿って、どのような人事制度を導入していけばよいのか、検討していくことにいたします。
7.仕事上で、自分の意見が考慮されているように思われる
これは、提案制度に成功している未来工業がベンチマークとして最高の教材になります。
未来工業では、提案制度の目的を「社員の創意の発揮、業務上有益な改善提案の奨励、経営合理化への協力関係の促進」としています。全国の工場ごとに提案委員会が設置されていて、社員から提案があると月次で提案内容を審査しています。
審査は1級から5級まで設定されています。審査の基準は、コスト削減や生産性向上の効果・アイデアの新鮮味・努力の度合い・提案者の補正の4つの基準が明示されていて、それぞれ25ポイントずつ配点されています。1等級の評価は95点以上の提案が対象になります。以下10点刻みで、5等級は55点以上のものが対象になります。報奨金は1等級30,000円~5等級1,000円となっています。さらに50点以下でも、参加賞ということで500円の報奨金が支給されます。これが「1件提案するだけでも500円貰える」という有名な仕組みの意味合いです。
報奨は年次でも行われ、部長会が、1等級と2等級の評価を得た提案の中から優秀提案賞を選んでいます。報奨金は30,000円が支給されます。さらにまた年次では、多数提案賞というユニークな報奨が用意されています。年間で20件以上提案している者に支給され、提案件数に応じて報奨金が支給されます。200件以上になると最高額の150,000円が報酬金として支給されるルールになっています。さすがに年間でそれだけの件数を出すのは容易ではないでしょうが、内容と積極的に提案している姿勢の両面に光を当てて提案制度がつくられていることがわかります。提案制度を導入しても、なかなか社員から提案が上がってこないという事例を見聞きしますが、未来工業の取り組みを参考に工夫を加え、自社なりの提案制度を取り入れていくことで、「自分の意見が考慮されている」と感じる社員を増やすことにつなげていくことが出来るでしょう。
8.自分の会社の使命や目標は、自分の仕事を重要なものと感じさせてくれる
これも当然といえば当然ですが、一生懸命に仕事をしていても、している仕事が法令順守すれすれの内容であったり、お客様にとって真に利益をもたらすようなものではないと社員が感じながら日々仕事をしているようでは、その組織に絆感をもつことは難しいでしょう。
ここ最近の通信でもご紹介していますが、“全世界全ての人たち”が“持続的”に“人らしく生きる”ための開発目標として国連が定めたSDGsを、自社では事業を通じて貢献していくと宣言することは、このエンゲージメント8にものすごく効果的ではないかと感じます。
その貢献目標が、組織と自分自身の目標達成とリンクできるように、目標管理制度といった人事制度面で紐づけられれば、さらにわかりやすく「自分の仕事は重要なんだ」と感じることになるのではないでしょうか。
9.自分の同僚は、質の高い仕事をすることに専念している
これもまた、重要な視点が含まれています。自分は一所懸命に仕事をしていても、同僚が不平不満を口にしてやる気が感じられない、あるいは向上心をもとうとせず楽な方に流れるといったようでは、むなしさを覚え、やはり組織に対する絆感が増してくることは難しくなることでしょう。
このエンゲージメントでは、人事制度というよりは、例えば「ありがとうカード」のような、お互いに感謝を伝え合うような風土をつくる仕掛けが有効ではないでしょうか。同様に表彰制度で、品質向上や顧客からの満足度向上をテーマにした内容を整備していくことでも効果がありそうです。また、朝礼での3分スピーチで、仕事上であったいい話や感動エピソードなどを披露しあうような場を継続的につくっていくことも効果的でしょう。
10.仕事上で、誰か最高の友人と呼べる人がいる
これは、部署間を超えて社員同士が交流できることで、実現性が出てくるでしょう。より効果的にしていくためには、オフサイトミーティングが日常的に実践できる場づくりをしていくことでしょう。対話ができる風土のあるところに、同好趣味で集える「クラブ活動」のサポートや、伊那食品工業が実践している社員が企画段階から関わって進めていく「社員旅行」といったイベントを織り交ぜていくと、このエンゲージメントはうまくかかっていくものと考えられます。
【配信のお申し込み】――――――――――――――――――
SVCでは、「人を大切にする会社」に関するトータル情報誌として、毎週「新SVC通信」を発信しています。
無料配信のお申し込みはこちら
このコンテンツの著作権は、株式会社シェアードバリュー・コーポレーション(以下SVC)に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、SVCの許諾が必要です。SVCの許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。