第755号 GPTWの最新提言を検証する② 心を雇う
2018.10.15
GPTWの最新提言を検証する② 心を雇う
[提言⑦]
「手を雇う」ことから「頭を雇う」、さらに「心を雇う」ことへ雇用のあり方が変化することで、従業員に対するマネジメントに大きな影響が現れる。
心を雇うとは、いい表現と感じます。心のない機械ではなく、心のある人間が主役になる時代、まさしく人が中心となる人本経営が、これからますます時代の中心になってくると自信と確信が持てます。
[提言⑧]
信頼されるリーダーになるための最初のステップは、従業員の話に耳を傾けることだと考えていた。しかし、それだけでなく「部下を信じる」ことも重要だとわかってきた。従業員が有意義な意見を言ってくれると経営者・役員が信じていなければ、有能な部下からの信頼を得ることは難しい。
指揮命令で巨大な組織を動かすことで大量生産を目指した右肩上がりの環境がなくなり、人口減少という右肩下がりの新しい環境下において企業が付加価値を生み出していくために必要なことは、心ある一人ひとりの社員のポテンシャルを高めていくことに尽きます。そのためには、任せて育てる以外にありません。だから信じることだとGPTWは提言しています。信じるから信頼が生まれると説いているのです。これを実現させていくための鍵は、性善説に立脚したマネジメントであろうと想定されます。管理主体の組織では、どうしても社員に対して性悪説で物事を発想しがちになっていたと思いますが、ここでも発想の転換が必要になってきそうです。
[提言⑨]
今の時代、企業にイノベーションが欠かせない。絶え間ないイノベーションというのは、新しい製品、新しい事業分野、効率と利益を最大化するための新しい内部システムなどを次々生み出すことを指す。最高のイノベーションを求めるなら、働く人全員の潜在能力の最大化を図る必要がある。
人本経営に成功している「いい会社」は、「そこまでするか」といった感動想起や、その会社にしかできないようなオンリーワン的な商品開発を実現することを得意としています。それはまさしく、現状に満足せずに、変化して成長し続けるイノベーションが起きているからに他ならないでしょう。そのためには、社員一人ひとりの潜在能力を高めよということです。
[提言⑩]
職場で有意義な人間関係を築くことは、すべての従業員が常に素の自分でいられるようにすることから始まる。「働きがいのある会社」の従業員たちが、何十年もの間、「ここではありのままでいられる」と言っているように、職場で別の人間を演じることは非現実的になりつつある。会社でもありのままでいられる人は、安心感をもち、批判を恐れたり、遠慮することなく、独自の見解や様々な経験、創造的なアイデアについて発言することができる。これはビジネスに良い影響をもたらす。そのような従業員の発言はイノベーションにつながる可能性があり、従業員が潜在能力を最大化する基盤を築く助けにもなる。
いい会社でよくみられる「何でも言える組織風土」を実現していくことの重要性とこの提言はオーバーラップします。何でも言えることで、それぞれの社員の長所が発揮され、それがイノベーションにつながる結果をもたらす可能性を高めるということでしょう。納得できる提言と感じます。
[提言⑪]
ビジネスは成長の過熱に気をつけなくてはならない。組織にとって最適な「持続可能な成長率」、すなわち追加融資を受けずに成長できる最速のペースを計算する必要がある。「常に大忙し」な状態を価値観とする男性的な文化と成長重視の風潮が合わさって有害な職場が生まれると、結果的に顧客と投資家から反発が起きることがある。
これは解説の余地がないところですが、GPTWでも、働きがいのある会社を調査し続けて、「年輪経営」の重要性を指摘するに至っているのだと感じます。伊那食品工業の塚越寛会長の経営哲学の正しさが立証されているかのようです。「年輪経営」の状態を続けていくことで、社員の健康も確保でき、敵をつくることもなく安定した状態をキープし続けることができていくのです。(以下次号)
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