第743号 島根ツアー2018での学び
2018.7.17
島根ツアー2018での学び
島根県益田市の地元の会計事務所が主催して、島根で初の「人本経営実践講座」がこの春から開催されています。座学だけではなく実際にいい会社の現場に触れようということで、先週2日間、県内の優良企業の視察ツアーを行いました。また沢山の学びをさせていただきましたので、今週号ではシェアをしていくことにいたします。
■深く考えさせられた須山木材のベンチマーク
須山木材株式会社(出雲市)では、荒廃するわが国の林業界で輝きを放つ珠玉の企業です。明らかな国策の失政といえる結果と思われますが、日本は陸地面積の67%を森が占める森林大国であるにも関わらず、供給されている木材の約8割は輸入に頼っている現況下にあります。需要を外材に奪われた林業は採算が取れず、多くの林業経営者は廃業していきました。林業の就業機会が減少し、若者は都市部へ職を求めるようになり、山村地域では林業の衰退とともに地域の活力も低下し、林業就業者の高齢化、後継者不足に頭を悩ませています。
そうしたなか、同社では島根県内に500ヘクタール、東京ドーム100個分の社有林を有し、外部環境の悪化という要因をものともせずに、永年、売上高経常利益率5%以上という快進撃を続けている優良企業です。さらに須山木材では、植林・育林・間伐など環境保全にも積極的に取り組んでいます。
今年は広島・愛媛を中心に西日本で記録的な豪雨となり、あまりにも多くの地域で土砂崩れ、河川の氾濫・決壊による水害に見舞われ、犠牲者も200人を超える痛ましい災害が発生してしまいました。被災された方々には心よりお悔やみ申し上げますとともに、一日も早く元の生活が戻ることを祈念いたします。
■近年、なぜわが国に自然災害が多発するのか
須山政樹社長は深く考えさせられることを口にされていました。「昔から、森は海の恋人といわれています。美味しい魚を獲りたければ山を掃除しなさいと言われているのです。」山は貯水装置そのもので谷川を経由して海へ注ぎます。そのプロセスでミネラルなど沢山の栄養素を蓄え、海に到達することで豊富なプランクトンが発生していきます。それを魚介類が餌にして豊かな生態系が実現し、豊漁にもなるということなのです。近年、色々な種類の魚が不漁になっているというニュースをよく聞くようになってきました。中国をはじめとするアジア諸外国の発展と食生活の改善により資源を乱獲しているという側面もあるようですが、そもそも魚の絶対数が減少していることが要因となっていることも確かでしょう。その大きな理由が「環境の悪化」に他なりません。
さらに須山社長は指摘されています。「地球のエアコンである山をきちんと手入れすることで温暖化は防止できるはずです。」経済発展を優先し、環境保全を疎かにして地域が砂漠化してしまったところが世界にはたくさんあり、それはエアコンである山や森を破壊してしまったからだとおっしゃいます。そして、今、日本は国中を覆っている森林の保全活動を疎かにしてしまって、循環機能が不全になり、結果として自然災害が頻発するようになっているのだといいます。
戦後、わが国は全土が焦土化し、木材需要が一気に高まり、いたるところがはげ山になりました。国策として植林活動に励み、長い時間をかけて山は再び緑に覆われるようになりました。定期的に間伐し、育林していくことが大事なのですが、経済合理性がないということで業者が育たず、荒廃する森林が多くなってしまったのです。
■原子力より森林力
間伐しないと木々は周りの木に負けないように上へ上へ伸びる競争を始めます。そうすると、根と木のバランスがおかしなヒョロヒョロ型になるそうです。その結果、多雨に対して耐えられない、崩れやすい土壌になっていくのだそうです。確かに今回の災害で、こんなにも簡単に崩落するのかという山の映像がたくさん撮られていました。
日々、森林保全活動をしている須山木材だからこそ、できる指摘の数々だと感じました。もはやわが国は、リスクの高い原子力発電所にマンパワーと公的資金をつぎ込むことをやめて、森林保全に注力していく決断をすべきなのではないでしょうか。
今週は1社の紹介でいっぱいになってしまいました。続きは次号でご紹介いたします。
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