第738号 がんばれ人本経営者~天命・宿命・運命・使命・立命の話
2018.6.11
がんばれ人本経営者~天命・宿命・運命・使命・立命の話
業績がいいことを目指すのではなく、会社経営に関わるあらゆる人間関係の質を高めて幸福度を増大していく人を大切にする経営を実現して「いい会社」をつくることが、これからの時代の本筋という考え方が、だいぶ社会に受け入れられるようになってきたと実感しています。
そして、昔も今も変わらないことは、トップ・リーダーの資質で経営状況は決定づけられるということです。ただ、昔は商売上手であることが優先される資質でしたが、現代以降は、その大前提として、経営者の心が整っているということが求められてきています。
相手を儲けさせて、社員に裕福な思いをさせることができる商才があれば、唯我独尊タイプでも名経営者と呼ばれていましたが、これからは物質的な豊かさだけでなく、精神的な裕福感を感じられるような徳のある振る舞いを実践できる者でないと名経営者という称号は得られなくなってきています。
人本経営に成功している経営者は、これを心の時代と称して、社員とその家族から始まり、経営に関わるステークホルダーを近い順から幸せにしていくことを追及しています。
■良心に従って生きることの重要性
心のあり方・持ちようが、かつてないくらいに経営者の条件として重要になってきています。
売上や利益といった業績であれば数字で見えるので明確になりますが、心は目に見えないので、その状態を推し量っていくことはなかなか骨が折れます。
世界中のリーダーに影響を与えた名著『7つの習慣』を著したスティーブン・R・ゴビーは、「良心とは、私たちの心が澄んでいるとき、原則に沿っているかどうかを感知させてくれ、原則に近づかせてくれるために人間に与えられた賜物である。」と記しています。
良心に従って生きていると、原則と調和できる、と述べているのです。
原則とはいったい何を指しているのでしょうか。これは古今東西から言われてきた宇宙、あるいは自然の摂理ということでしょう。東洋の思想では、これを天命といいました。太陽が東から上り、西に沈み、春夏秋冬の季節はよどみなく繰り返されています。その営みは完璧に調和しています。
人は望んでいる、いないにかかわらずこの世に生を受け誕生いたします。私たちは日本人として生まれましたが、自分自身が希望したわけではありません。この命をいただくことが宿命ということになります。生を受けた以上、人生を歩むことが必須となります。そして日々、命を活かし続け生きていきます。それが運命ということに他なりません。
そのプロセスで、天命と運命を一致させるように生きていくことが、良心に従って生きることなのだとゴビーは説いたのだと思います。それをサポートするために宗教が誕生し、発展していきました。良心のことを西洋では愛、東洋では慈悲といい、先駆者は教えを説いていきました。
組織体としての会社の経営の任にあたる経営者は、このことを意識して日々舵を切ることが大切です。天命、すなわち宇宙あるいは自然の摂理はエネルギーそのものですから、調和している限り、持続可能性は高め続けられ、永続の道を進んでいくことが出来ます。しかし、自己中心的なエゴが強くなり、他とのバランスを欠くような状態になると、原理原則に戻そうとするエネルギーが反射してその存在は修復されていくようになります。台風が発生して、やがて熱帯低気圧になり、消失していく様と似ています。
良心は、自分だけがよければいいというのではなく、最大多数の最大幸福を実現していくための利他の精神そのものといえるでしょう。天命は良心で構成されているのです。
人本経営を極めていくことは、天命と一致していくプロセスに他なりません。目的が拡大再生産ではなく、調和善循環におかれているからです。孔子は五十にして天命を知ると説きました。それほど奥深きことなのでしょう。しかし、気づいて実践している経営者はその段階まできたのです。使命感が得られた状態です。この後は愚直にその道を前へ前へと進めて、人本経営を完成させていきましょう。その時、宿った命は立命して、このうえなく美しく輝くことでしょう。
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