第854号 いい風土をいかにしてつくるか
2020.8.3
いい風土をいかにしてつくるか
「制度より風土」これが人本経営の鉄則の一つです。
では、いい風土はどのようにしていけば醸成されてくるのでしょうか。
それにはいくつかの外せない要素があります。
1.人間尊重の理念の礎があること
当然にトップが、それを揺るぎなく意識して行動していることが求められますが、人を大切にすることを旨とした経営理念が組織に通底している状態にあることが必要です。
そのような組織では、その結果、以下が実現しています。
□ 家庭の事情が仕事の都合より優先できる文化となっている
□ だからといって、社員がそれを権利と考えていない
□ 全員がその文化を大切にしていることを素晴らしいと感じ、感謝の気持ちが蔓延している
2.行き届いた教育
そうした人間尊重の文化は、もちろん黙っていて形成されるわけではありません。どの会社でもそのことを実現していくための教育に余念がありません。教育の実践法は、各企業によって特色が出ます。いくつかご紹介してみることにいたしましょう。
<朝礼を教育の有効な場にしているケース>
毎日の朝礼で、前日に起きた出来事を振り返り、わが社の経営理念らしく行動が出来たのかどうかを確認し合う時間をつくることを繰り返し、一人ひとりの社員がわが事として心に落とし込んでいきます。長野県にある人気旅館「岩の湯」では、一つひとつの課題をみんなで深く考えることでの「価値観の共有」を最優先とし、理念(幸せをアートする)を共有する場として朝礼を大事にしています。例えば、前日に実際起きた出来事に対して振り返りミーティングをして、それが岩の湯らしかったのか、先輩後輩を超えた健全な批判精神を発揮しながら、理想とする自分たちに近づくための「自己検証」を繰り返し実践しています。
<定期的に教育の場をつくっているケース>
本業をいったん停止して、自分たちが大切にしようと誓っている価値観や原点に深くマインドセットが出来る人間力養成のための教育の場づくりしていきます。半期に1回、合宿のような大掛かりな展開をする会社、定期的に社内研修の時間を設定する会社等、方法はその企業の好みが出ますが、トップはもちろん、メンバーもこの時間をとても重要で大切な時間と受け止めて、真摯にのぞんでいます。
その他には、委員会活動や社外での社会貢献活動をこの時間にうまく当てているケースも見受けられます。
3.対話の質と量の確保の工夫
理念と教育に加え、社風のいい会社は、社内、社外での人間関係を良好にしていく工夫をしています。社員一人ひとりを取り巻くステークホルダーとの関係の質の向上をはかることで、社風が抜群によくなるという結果の質が得られているのです。
これに関して見事な展開をしているのが、大阪にある‘幸せ制作会社’HEADSです。暮松社長は同社が商品としているラッピング資材のユーザーである全国30000店以上の花屋、雑貨店、ケーキショップ等の小売店・ショップへ足しげく通う活動を続けています。「顧客訪問現場視察会」と称し、訪問の際には社員数名も同行します。訪問をうける店々は大歓迎で迎え入れてくれます。社員たちは自分たちの商品や思いがいかに現場で役立っているかを肌身で感じ、いやがうえにもモチベーションが向上します。また、行き帰りの道中、社長と社員は、自分たちがもっと社会から必要とされるための濃厚な対話の時間を得ることになり、ぐっと絆が固められて現場に戻ってくることになります。これを繰り返していけば、風土がよくならない訳がないでしょう。
どのような会社でも同様の効果を得られる施策として、オフサイトミーティングの活用が有効です。トップやリーダーが率先して機会をつくることはもちろん、開催権限をメンバーに付与することが実現できるようなれば、相当に風通しのいい社風がつくれることでしょう。
いい風土づくりは奥が深いテーマです。今後も折を見て役立つ情報を提供していきます。
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