第1080号 ジョブ型雇用が生み出しているのは中高齢者の大量のリストラ
2025.4.14
前号で政府推奨のジョブ型人事指針で事例として紹介されているオリンパスでおぞましいリストラが実施され、大量の労働者が不幸になっているとレポートしました。信じがたいという反響をいただいています。しかし、これがこの会社のことだけではないということを今週号では検証してみます。このジョブ型人事指針(以下「指針」)で推奨された企業の現況を確認してみることにいたします。
リコー、国内外2千人削減へ~2024.9.12朝日新聞
オフィス機器大手のリコーは12日、国内と海外で1千人ずつ、計2千人の人員を削減すると発表した。国内ではリコーとグループ会社を対象に10月1日から業種を限定せずに計1千人の希望退職者を募る。応募者には退職金を積み増し、再就職を支援する。退職は2025年3月末付。~以上引用
2020年4月にジョブ型人事制度を導入したリコー。指針では12番目の事例として紹介されています。この記事によると、新人事制度では管理職最下層グレードを意味する「アソシエイト・エキスパート(AE)」が設置され、AEとなった者の多くが3年後、非管理職へと落ちていく衝撃のスキームだと紹介されています。別の記事によると500人がAEとなったようです。リスキリングして復活した管理職や新制度により30代で管理職に就いてモチベーションが上がったという事例も紹介されてはいるものの、大量のリストラをするのです。つまり、優秀・普通・問題の2:6:2の下位社員の切り捨てを行うためにジョブ型雇用が導入されているとみて間違いないでしょう。そんなことをしても残った社員層は、また2:6:2に分裂するだけです。イタチごっこを続けやがて時間と共に企業体力が萎んでいくに違いありません。人本経営は下位の2割は組織の伸びしろと考えて絶対にリストラしません。どちらが健全であるか明白です。
資生堂、国内で早期退職1500人募集 社員の1割強に相当~2024.2.29日経新聞
新型コロナウイルス禍で落ち込んだ化粧品販売は回復しているものの、利益率は低迷しており、事業構造を見直す。国内事業を手掛ける子会社の資生堂ジャパンで45歳以上かつ勤続20年以上の社員が対象となる。4月から5月にかけて募集し、9月30日が退職日となる。~以上引用
2020年にジョブ型雇用を導入した資生堂。指針では11番目の事例として紹介されています。この記事では社長は「根本的に大切なのは人事評価制度です。来年1月から一般社員3800人をジョブ型の人事制度に移行します。『この仕事は何が必要か』を細かく説明し、一番ぴったりあう人を配置します。ジョブ型はよく成果主義と言われますが、それは短絡的で、究極の適材適所です」と息巻いていますが、4年経って結果が伴わずリストラです。
根本的に大切なのは、制度より風土です。
思えば10年前、資生堂ショックと話題になった育児女性社員への厳しい労務管理体制の変更がありました。ここからもうおかしかったのでしょう。
オムロン、国内希望退職に1206人が応募 募集上回る~2024.6.4 日経新聞
指針では7番目の好例として紹介されているオムロン、ここでも40歳以上の正社員やシニア社員を対象に希望退職を募集していたということです。予定を上回る応募となったということはそれだけこの会社の将来を不安視している社員が多いということでしょう。かつて優良企業といわれていたオムロンの見る影がありません。オムロンのジョブ型雇用は2010年からと筋金入りです。でも結果が伴っていません。無論ここ数年は下降しています。
ジョブ型は大量リストラへの伏線になっている
こうも同様の事例が重なると、ジョブ型は導入後、社員に高い目標設定を背負わせ、達成できない者には退職勧奨を促す希望退職制度とセットとなっていて、しかも対象者を40代以上の中高齢者に的を絞っていく仕組みであると断定できます。確実にその思想でコンサルティングをしているグループが存在しているに違いないと思わざるをえません。そして、意図して政府もそれに加担しているだとしたら最悪ではないでしょうか。~次号へ続く
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