第1064号 いい子症候群の若者とどう向き合うか

第1064号 いい子症候群の若者とどう向き合うか

人本経営に傾倒しているクライアント先では、新卒の採用に成功する事例をよく目にします。そして、本当に気心の優しい若者をよく採れるものだと感心させられるのです。その彼女もそうでした。聡明で明るく才媛才女を絵にかいたようなタイプに見えました。

少し親しくなりZ世代といわれる最近の若者のことについて触れる機会があった時でした。

「私もこのとおりなのでよくわかります」

とある本を紹介してもらいました。そのタイトルは「いい子症候群の若者たち」(東洋経済)というものでした。サブタイトルに~先生、どうか皆の前でほめないで下さいとありました。

えっ、ほめられるのって万人に効果的だと思っていたが違うのかとその本を読み込んでいきました。

衝撃の若者の特徴

大学の教授が著者でふだん多くの若者に接していて気付いた近年の若者の傾向を一冊にまとめたものです。冒頭の才女がそのとおりといった特徴として以下が挙げられていました。

① 周りと仲良くする能力が高い            
② さわやかで若者らしい
③ 学校や職場では横並びが基本                  
④ 言われたこと以上のことはやらない
⑤ 人の意見をよく聞くが自分の意見は言わない
⑥ 授業や会議では気配を消し集団の一部と化す
⑦ 自分を含むグループ全体への問いかけには反応しない
⑧ 質問しない
⑨ ルールは守る                            
⑩ リーダーにはなりたくない
⑪ 自分はダメな人間だという思いが強い             
⑫ 競争は嫌い
⑬ 特にやりたいことはない

①、②はまさしく「いい子」ということなのでしょうが、それ以外は正直、当方の性格や態度とは、ほとんど反対な行動ばかりで唖然とさせられました。昭和の頃であれば、そのような行動をしていれば、確実に周りから置いていかれるに違いないと感じました。

若者のせいではなく、そういう若者を社会が生んできたのだと著書は説明し、無論、すべての若者にこの傾向がみられるわけでもないと釘を刺していますが、どうみても優秀な前出の女史が「そのとおり」と言っているのだから、今の若者の実態に近いことは間違いないのでしょう。

どう向き合っていくか

自己肯定感が低く、目立ちたがらず、けれども、言われたことは真面目に行うという若者をどう活かしていくのか、これは新たな人事課題となってきそうな予感がいたします。

やはり、その答えは人本経営に成功し多くの若者が、イキイキと働き定着している企業にあるのだろうと感じます。その意味ですぐに思いつくのは、居酒屋とりのごん助(有限会社ライト・ライズ)です。地元の高校生、大学生たちが自律し本当に素晴らしい働きぶりを自発的にしています。

寺本幸司社長は、若者に言います。「ここは時給千円ちょっとを稼ぎに来る場所ではなく、貴重な若い時代の時間を君たちは使うのだから、働いてくれている間、人として生きていくうえで大切なことを学んでほしいし、そのために自分は100%全力でみんなに向き合っていくので、どうかここでの体験を元に幸せになっていってほしい」この熱さは間違いなく今の若者にも響いています。

やはり本気度、これに勝るものはなく、それに尽きるのだと改めて感じ入るのです。

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