第1052号 最高峰の人本経営企業後継者が語る経営でいちばん大切なこと2
2024.9.9
前号に引き続き、日本食糧新聞のサイト掲載記事食品企業におけるパーパス経営の先進事例:伊那食品工業・塚越英弘社長に聞くから伊那食品工業の研究を深めるレポートをいたします。
創業者の考えの意味を引き継ぐ/社員の給料を必ず増やす/社員の幸せを軸にする
部署の垣根を越えたつながり/世の中にない商品で利益率を高く設定/利用者が求める価値を作る
考え方が合う企業とのみ取引/決裁ルートは横一線/社員と経営者がやりたいことだけをやる
お客さんからのアイデアを形にする/事業拡大は社員の幸せが前提
上記は記事の見出しを羅列したものですが、これだけでも学びがあります。前号で取り上げられなかった特筆すべき点をまとめてみます。
社員の給料を必ず増やす
「業績が悪くても増やす方針ですので、今のような値上げが続くと、その分はさらに上乗せして増やしてます。その結果か、社員の定着率は高く、ほとんど辞めない」~以上引用
給料を上げることへの執着がすごい。年齢の15倍の年収、これは人本経営では目指したい水準です。どうすればそれが実現していけるか、全社員の知恵を集結させていきましょう。
60歳まで昇給し続け65歳までその水準をキープ
「わが社には役職定年はないのですが、給与は60歳まで上がり、その後、65歳まではそのままの水準になります。同年齢の人の給与水準は、あまり変わりません。 役職が違えば多少は違いますが、その役職でやった分が違うだけで、基本給は一緒です。年功序列で給料は必ず上がっていくので、先輩の方がなんで俺より仕事ができないのに給料高いのって思う人もいるかもしれないけれど、いずれは自分も上がっていくと考えて、先輩と同じように処遇してもらえるんだと思い頑張れるのだと思います。」~以上引用
加齢と共に給料が上がり豊かな人生を送っていけることこそが幸せの揺るぎない形であり、そのための人事は年功序列がふさわしいという結論を見事に出しています。終身雇用、年功序列が悪なのではないのです。ジョブ型に代表されるそれを実現できない近視眼的な成果主義の経営のあり方こそが悪なのです。それを伝えないコンサルタントは偽物です。要注意です。
年功序列でもフラットな組織をつくるために
「私はフラットな組織は仕事を通じてだけではできないと思います。社員みんなでやることを大事にしました。仕事ではなくてみんなでやる社員旅行などのイベントです。社員旅行とか、朝の掃除の作業や月例会、営業会議などの機会にトップからの話や、社員同士のコミュニケーションが行われることでフラットな関係ができている。会社を組織化するというのは、私たちにとってやりたくないこと。社員との関係をドライな関係にすると、関係性が壊れるのではないかという思いと、いろいろと面倒なことになる。」~以上引用
年功序列だけれども硬直した組織風土になっていないということが伝わってきます。気軽に社長にやりたいことを相談し、よしやろうと決済されコトが進んでいるのです。横でつながる関係性ができ上がっていることと性善説で社員を信じ切る風土が形成されているために成し得ることだと悟らされます。
マジョリティは社員
「先代の時に、創業家(塚越家及び井上家)は株式を売却し、マジョリティを持っていないのです。今でも一部は所有していますが、所有株式の多くは社員持ち株会に売却していますので、当社株式のマジョリティを持っているのは社員です。」~以上引用
さすがの伊那食品工業、やはり経営を創業家のために行っていないことが示されました。立派です。結果としての経常利益率は10%ということも確認できました。本当に見事です。
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