第702号 人本経営の「守破離」

第702号 人本経営の「守破離」

人本経営の「守破離」

最近、ベンチマークさせていただく先で、人本経営に成功している経営者から立て続けに成功の理由として挙げられているキーワードがあります。

それは「守破離」という言葉です。

「守破離」は、武道、茶道、芸術、スポーツなどにおける修業の理想的なプロセスを3段階で示したものといわれています。

…師や流派の教え、型などを忠実に守り、確実に身につける段階
…いままでの教えを基礎とし、自己の知能や個性を発揮して次第に自己の道を創造し型を破る段階
…それらに創意を加え、自分独自のものを追求し確立する段階

いわば「守」は基本ということです。書道ならば楷書をしっかりとできるように鍛錬する段階ですし、将棋では定石といわれる戦法の基本的な考え方をしっかり理解するということです。ここでは、我流にならないように、師範や先代の教えを素直に謙虚に学ぶ姿勢が何より重要です。

そして、型が身に着いたら、「守」の段階でとどまることなく、己の感性を発揮して、よりよくしていくための変化を起こす挑戦をしていくことが必要です。

時代や環境は常に変化しますから、それまで適合していた基本も、時として応用を重ねていかなければならない局面が来るのは当然と言えるでしょう。

師範や先代の教えに明らかに疑問が生じる事態が発生しているにもかかわらず、ここで己を活かそうとせず沈黙してしまうのは、いわゆる太鼓持ちといわれる状態になってしまうということです。

師範や先代の周りにはイエスマンだらけになり、判断を誤らせるリスクも高くなってしまいます。

疑問をそのままにせず、それを解決するための創意工夫を重ねていき、改良を加えていくことが「破」ということになります。ここで大事なことは「守」で得た本質的な原理原則については逸脱しないということです。

原理原則を忘れて「破」に進むのは、型破りではなく形無しであって、元も子もなくなります。

■社会にとってよりよい結果をもたらす「破」が理想的な「離」をもたらす

「破」の段階では、無謀だとか、非常識だとか、出すぎだとか、抵抗勢力に抗われたり、出る杭状態でバッシングされたりすることが往々にしてあることでしょう。

しかし、「破」を実践していくことが、「守」の理念を結果として守ることになり、これからの社会にとってより有益なものを創造する道につながるという実践者の信念と本気の覚悟と決断が、現状突破を実現させていきます。

この段階で実践者の利己が透けてみえてしまえば、「離」での成功は望むべくもありません。

業績軸から幸せ軸への転換を実現していくことが人本経営に至る「破」の段階です。

多くの人本経営成功者はここでの苦労談と回想をよくされますが、自利利他でコトにあたり、この道こそ社員、取引先、顧客の幸せ増大につながると信じて、ぶれずに一歩ずつ前へ進んだことで、誰もが絶賛する「いい会社」という理想的な「離」を実現しているのです。

■人本経営の「守破離」はエンドレス

うならされるのは、理想的な「離」の段階にあるのではないかと思う人本経営者が、さらに次なる「破」の行動に打って出ていくことが少なくないということです。

決して現状に満足することなく、さらに世のため人のため行動に駆られていくのです。

満足度を高めるのではなく、幸福度を高めていく人本経営は、理想に向けて「守破離」を永続的に繰り返す経営なのだと悟らされます。

だからこそ腐敗せず、永遠に輝き続けていく会社が実現できるのだと学ばされています。

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