いい会社視察記録

川越胃腸病院


伊那食品工業さんに勝るとも劣らない、究極の理念経営をしている組織をまた知ることができました。埼玉県川越市にある川越胃腸病院さんです。うわさは以前から聞いていましたが、先ごろ院長の望月智行先生が書き下ろされた『いのち輝くホスピタリティ』を読了し、これは完璧に近いという感想を持つにいたりました。

書籍で紹介されている客観的なデータは驚異的な値となっており、いかに素晴らしい経営人事を実践されているかが推測できます。

社員満足が高く、顧客満足も高まれば、必然的に結果もついてくることになりますが、やはり、新規の患者様の来院数も年々増加し、1991年と2006年では新規患者数は二倍強になっているといいます。理念経営に成功している経営者の書籍を読むととても学びを得られますが、この望月先生の『いのち輝くホスピタリティ』も本全般に大変多くの気づきや示唆が散りばめられています。書籍では、想いはあったもののなかなか浸透せず、最初から今のような状態になれたわけではなく、相当に苦労を重ねてこられたと語られています。あきらめずに理念経営を実践し成功した体験であるだけに、これから志していこうとする企業や経営者の方には、より大切にしていかなければならないポイントや留意点、考え方が鮮明に際立って単刀直入に伝わってくるはずです。それでは、川越胃腸病院の経営人事の研究を進めていきましょう。


副理事長である姉の思想に大きく影響されたということを回想されていますが、そのなかでも「やがて病院はその経営姿勢とサービスの質によって選ばれる時代が必ず来る」という想いを20年以上も前にもち、医療は究極のサービス業と位置づけて病院経営を実践されてきたことに卓越した先見性を感じます。そして、「患者様の満足と幸せの追求」「集う人(職員)の幸せの追求」「病院の発展性と安定性の追求」の3つの経営理念を根幹に据えて医療活動を続けてこられたということです。

今、現在の状況ですが、病床数は40床に対して職員数は100人という病院になっています。通常の病院に比べ倍以上の職員を配置していることになるようですが、これについては『私たちは、病院規模を拡大せず、小規模経営に徹してきました。それは、最終的には医療の質を維持するためですが、もうひとつは、職員と患者様全員の顔が見え、コミュニケーションを保てる人数の限界という意味で現状の規模にこだわりたいというのが経営者としての私の哲学であり信念でもあるのです。』と明確に理念を追求し実践してきた結果であると揺るぎない姿勢を示しておられます。これがなんともずっしりと信頼感を感じさせます。1997年に日本医療界でははじめての第三者評価機関である財団法人日本医療機能評価機構により、病院の組織基盤や診療の質、患者様の満足度、適切な看護など約200項目について評価を行う第一回認定審査が行われました。ほとんど準備らしい準備もできないまま挑戦したそうですが、応募した25病院のうち、わずかに8病院しか認定されなかったなかで、川越胃腸病院は、見事にその一つになったということです。やってこられたことを考えますと納得できるところです。書籍では、具体的にどのような経営人事を実践してきているかについてもまとめられています。

川越胃腸病院で働く職員さんたちの言葉です。万感の幸せ感があふれています。どうすればそういう職場がつくれ るのか、まさにそれを同院の経営人事から学ばせていただきたいと考えます。

望月先生は『ES なくしてCS なしを信条とし、どんなに経営が厳しい状況にあっても、常にES を原点として理念 を実践するという基本姿勢が、職員意欲を生み出し、職員と病院との強い絆に育ってきた。』と語っています、しかし、そうした想いをもっていても、当初は採用した人が定着せず非常に苦労したといいます。そこで、まず感じたこ とは採用の際の考え方を次のようにとらえたということです。

こうしたポイントを意識しながら、年に二度、院長や役員による理念面接を行っているといいます。面接では、病院業績の伝達と理念や動機付けの確認を行っているのだそうです。


著書の中では、読者が実践できるように非常にうまくまとめられているところが随所にありますが、中でも働きやすく、心地よい職場づくりのための指針として掲げられた以下の点は、21世紀型企業の経営人事目標として極めて参考になると感じました。

こうした点を目標にして組織づくりを続けていけば、モチベーションが高まる理想の職場に一歩ずつ近づけると指摘されていますが、そのとおりであると感じます。医師としても一流ですが、望月先生は経営者として超一流な方であると感心することしきりでした。まだまだご紹介したい貴重な視座がたくさんあります。ぜひ、理念経営を実践しようという経営者、人事担当者、社会保険労務士の方は、『いのち輝くホスピタリティ』をご一読いただくことを推奨いたします。得るところ極めて大です。

新SVC通信 第258号(2008.10.06)より



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